Thrill Jokeyからリリースされた最新作「ロスト・イン・ザ・グレア」で、ギター2本による印象的なサウンドをクリエイトし、アメリカ西海岸のアンダーグラウンド/アート・シーンの充実ぶり、その面白さ、奥深さを伝えてくれたバーン・オウルのメール・インタビューが届きました!
インタビュアーはライナーも手がけている天井潤之介さん。彼らの美しくも幻想的でありながらもリアルな手触り/感触を併せ持つ、彼らならではのサウンドをひもとくキーワードや、彼ら自身が活動の拠点としている西海岸アンダーグラウンド・シーンの今や、その人脈図などなど。
興味深いインタビューとなりました!「ロスト・イン・ザ・グレア」を聴きながら、ぜひご一読を!

●昨年、日本でもあなたたちのアルバム『ロスト・イン・ザ・グレア』がリリースされて大きな反響を呼びました。日本であなたたちの作品がリリースされたのは初めてという事もあり、『ロスト・イン・ザ・グレア』をきっかけにバーン・オウルについて知ったリスナーも多いかと思います。なので今回のインタヴューでは、『ロスト・イン・ザ・グレア』についての話と共に、いくつか基本的な質問についても窺わせていただければと思います。
 まずは結成の経緯から教えてください。ふたりの出会いは大学時代にさかのぼるそうですが、バーン・オウルを始めるにあたってふたりの間ではどんな話をしたり、またヴィジョンの共有があったのでしょうか?

JON:そう、Evanと出会ったのは大学だ。当時ぼくらは2人ともロング・トーンとアコースティックなテクスチャのフィンガーピッキングを重ね合わせたりすることに興味を持っていた。

●最初のリリースはCDRの『Barn Owl』だと思いますが、音作りは順調に進みましたか? それとも試行錯誤の連続でしたか? ちなみにバーン・オウルを始める以前はバンドを組んだりソロで音楽づくりをしていたりしたのでしょうか?

JON:あれはサンフランシスコのリッチモンドにあったぼくの汚いアパートで大部分を録音したんだ。思い出すと笑っちゃうよ。小さな部屋のなかで楽器の山と汚れた洗濯物に囲まれてレコーディングしたんだから。窓がすごく大きかったからカーテンを開けて大空を見ながら録音した。

EVAN:のんびりとしたペースでレコーディングした。この日までに終わらせなくちゃならないっていうプレッシャーがなかったから、実際どのくらいかかったかも覚えていないよ。他人に聴かせるために作ったものじゃなく、要するに実験てやつ。だからすごく自由で欠陥だらけ。Jonと一緒に録音する機会があまりなかったころは、多くをひとりで自宅でやってたから今思うとバーン・オウルのレコードって感じはあまりしないな。バーン・オウルのディスコグラフィーはNOT NOT FUNからリリースした「From Our Mouths…」から始めたほうが良さそうだ。
 もうひとつの質問に関しては、ぼくらはそれぞれ過去に他のバンドでプレイしたりソロでレコーディングしたりしていた経験はあるけれど、友人以外のオーディエンスを呼び込めるほどの活動じゃなかった。

●ふたりは過去のインタヴューで、ラ・モンテ・ヤングやテリー・ライリー、ポポル・ヴーに灰野敬二/不失者やフライング・ソーサー・アタックからの影響を語り、またリスペクトするギタリストにローレン・マザケイン・コーナーズとサンディ・ブル、ジョン・フェイヒィの名前を挙げていました。彼らの音楽のどんなところに魅了され、またそれはバーン・オウルのサウンドにどのような形でフィードバックされているといえますか?

JON:最初にプレイし始めたとき、オープン・チューニングやそれ以外のオルタネイト・チューニングの影響をぼくらはフェイフィーから受けていた。彼のデルタブルーズ・ギタリストたちへの関心や実験に触発されて、エフェクトペダルにアメリカーナ・ギターを結合させるというアイデアにぼくはさらなる探究心を駆り立てられていた。サンディ・ブルも出発点でアメリカーナを使い、そこからエフェクトを活用した新たなサウンドを確立している。
 これらのアーティストたちには、音楽には瞑想的で深く思考する環境を維持できる力があるってことを認めている人たちもいると思う。彼らは繰り返すことに細心の注意を払い、音楽が精神と肉体に及ぼす身体的影響を考えながら音作りをしている。大学時代にぼくは「Sound and Light」という本に出会い、サウンドと脳の関係について記されたヤングの記述に心を奪われた。鼓膜の内側で毛髪を活性化させるサウンドが脳の一部と調和するという考えは、ぼくにとって音を解体して異なる角度から理解することに役立った。

EVAN:彼らはみな、たとえそれぞれ違ったやり方であっても、情熱と強さを持っている(いた)。ぼくらの身体的なプレイの仕方やその音楽の裏側にあるイデオロギーにも影響を与えているよ。

●実際にバーン・オウルの音作りは、どのようなプロセスで行われているのでしょう? レコーディングの現場では事前の話し合いはほとんどなしに、それぞれアイデアを持ち寄りジャムで練り上げていく、とも聞きましたが。

JON:インプロヴィゼーションの最中にアイデアが浮かび、後でコンポーズされた楽章としてそれを固めることもあるよ。また、どちらか一人がアイデアを出して来て、一緒に少しずつ作り上げていったりすることも。

EVAN:たくさんインプロヴィゼーションをやりながら、そのなかで偶然生まれた楽章を新曲作りのベースとして使うんだ。その音はツアーを続けながらに徐々に進化して行く。何度もプレイして行くうちに楽曲は整い、本質に近づいていくんだよ。それらの大部分はぼくら自身が思いついたギターパーツから誕生し、リハーサルに持ち込んだものだ。

●過去のインタヴューでエヴァンが「“音楽の越境的な側面(the transcendental aspects of music)”を見誤らないことが大事だ」、というような趣旨の発言をされていたのが印象に残っています。これについて具体的に説明していただいていいですか?

EVAN:人々がミニマルとかアンビエントとか呼ぶタイプの音楽は、それを最大限に引き出すにはポップ音楽とは異なったアプローチをしなくてはならない。そしてそれには受け身で聴くんじゃなく集中することが必要になる、ってことをぼくは言いたかったんじゃないかな。一番わかりやすいのはポーリーン・オリヴェロスの提唱したDeep Listeningってやつだ。これは一度チェックしてみることをお勧めするよ。オリヴェロスはぼくよりもすごく上手にこの考えを伝えているからね。

●たとえば前作の『Ancestral Star』には「先祖代々の記憶(Ancestral Memory)」というテーマがあったそうですが、そうした考古学的なモチーフというか、スピリチュアルなインスピレーションというのもバーン・オウルにとっては重要だといえますか? またそうしたテーマに関心をもつようになったきっかけは?

JON:神秘的な可能性を反映させることには惹きつけられるし刺激的でもある。こういう概念や不確実性といったものは、ぼくらの日常やサウンドの裏側でまだ見出されていないものがあるんだと興味をかき立てられるよ。

EVAN:いつもそのテーマを繰り返しているかどうかは定かじゃないが、確かに「Ancestral Star」はそうだったね。大学時代にHafez Modirzadehという教授がいたんだけれど、彼は音楽民俗学を教えるだけじゃなく素晴らしいサックス・プレーヤーでもある人物で、ぼくにこの概念を紹介してくれた。強い力に結びつけるという考えは、単にパートを合わせただけよりもはるかにパワフルで、ぼくらが作ってきたたくさんの音楽全体に渡る考えだと思う。つまりより大きな力によって、それはスピリチュアルだけれども宗教的ではないやり方で、サウンドのカタルシス的パワーに触れるってことだ。

●ふたりはバーン・オウルとしての活動以外にも、ソロや、エターナル・タペストリーのディウェイ・マホッドとジェド・バインドマンを加えたガーデン・サウンド、あるいはハンギング・シーフやヒグマ、エルムといった様々なユニットで活動されてますが、それらの活動は自身の中でどう位置付けられているのでしょうか? バーン・オウルとは異なる領域をカヴァーするものであると同時に、それぞれが互いを補完し合うような円環状の一大プロジェクト、という印象も受けますが。

JON:ぼくらは忙しくしているのが好きなんだ。だからたくさんのプロジェクトに関わっているのは生産的な活動をし続けるためでもあるんだよ。

EVAN:バーン・オウルで向き合っているのとは違うサウンドの側面を探究するために、こういった活動を楽しんでやっているんだ。ガーデン・サウンドみたいな場合は、単に友だちと一緒に何かをクリエイトしているだけだけど。

●ニュー・アルバムの『ロスト・イン・ザ・グレア』ですが、リリースされて半年近くが過ぎました。自身の手応えや周囲のリアクションも含めて、振り返ってみて作品についてはどのような印象をお持ちですか?

JON:認められたっていうのがすごく嬉しいし、アルバム全体を誇りに思っている。

EBAN:このアルバムをすごく誇りに思っている。完全に実現できた作品を作り上げたんだって気がするんだ。このポイント以上の分析はしないようにしてるよ。

●“曲”が受け付けず、2年間タージマハル旅行団やトニー・コンラッドばかりを聴いていた時期に制作されたという前々作『The Conjurer』。そして、再び“曲”や“ポップ”にも関心が向き始めたという前作の『Ancestral Star』。対して『ロスト・イン・ザ・グレア』は、より起伏に満ちた曲展開とアンサンブルの構築性を探求した作品という印象を受けました。サウンドについて具体的なコンセプトや狙いのようなものはありましたか? 

JON:「ロスト・イン・ザ・グレア」では大部分で生演奏の感じをたどりたかった。ぼくらはもっとコンポジションに力を入れて、本格的なスタジオの資源を使ってできるやり方を活用していた。それは過去のレコードみたいなドローンぽく実験的な要素と、ギター・デュエットやオルタネイティヴ・インストゥルメンテーションを含むよりコンポーズドされたセクションを組み合わせる機会だった。また、アルバムのシークエンスに注意を払いながらプレイした。

EVAN:うん、その通り。「ロスト・イン・ザ・グレア」ではぼくらは賛美歌やクラウト・ロック、デザート・ロックなどからインスパイアされている。だからコンセプトは、大部分でオープンチューンド・ギターを使いながら、ぼくら独特の方法でこれらの要素を組み合わせて行くことだった。もちろんJacobのドラミングがこのアルバムの性質にとって大きな存在だったのは言うまでもない。

●前作『Ancestral Star』はドローン/アンビエント~ニューエイジ的な要素も強く感じられましたが、『ロスト・イン・ザ・グレア』では、「The Darkest Night Since 1683」の隆起するようなギター・ノイズ、「Temple of the Winds」で聴ける中近東~西アフリカ風のギター・インストゥルメンテーション、そしてラストの「Devotion II」におけるスピリチュアリズムと演奏の肉体性の融合に圧倒されました。たとえば、前作やこれまでの作品と比べて『ロスト・イン・ザ・グレア』の違い、際立ったポイントはどんなところだといえますか?

JON:二人ともトゥアレグのデザート・ミュージック(※ティナリウェンなど)をよく聴いていたから、その影響をくみ取ってくれたのは嬉しいよ。範囲をどんどん広げて、いろんな国のサウンドや音階を取り入れたかったんだ。特にトゥアレグの音楽は、音楽とスピリチュアリティと日常生活がつながっている。それらは切り離せず、互いに活気を与えている。この考え方が刺激的なんだ。

EVAN:デュアル・ギター・コンポジションにすごくフォーカスしていたよ。だからこのレコードにはドリフトが少なく、もっとストラクチャー的だ。ぼくらは簡潔なステートメントに終始して、アルバムを聴くと旅をしているような感覚になれるようクリエイトした。

●今作は前作に続いて2枚目のスタジオ・アルバムになりますが、レコーディングの部分で変化や新たな試みのようなものはありましたか? また今作ではビンテージ・シンセやバスクラリネットなどの楽器も使われていますが、音色の部分で意識した部分は?

JON:ヴェルナー・ヘルツォークのサントラで知られるポポル・ヴーによって確立されたデヴォーショナル・ロックに影響を受けている。ギターやピアノのメロディと、シンセや声のコンビネーションが、不吉で超自然的だがワクワクと高揚した場所に浮かんでいるような感じ。

EVAN:Phil Manleyがレコーディング・エンジニアとして素晴らしいアイデアや良い雰囲気をもたらしてくれたよ。Lucky Cat Studioのヴィンテージ・アンプやシンセやその他の機器が、作品に独特性を与えてくれたことも間違いない。ぼくらはアナログ機器が大好きなんだ。チューブ・アンプを通してテープにレコーディングすることで、ヴィンテージの持つ暖かさがレコードに伝わっている。ぼくらにとってそれはすごく大切なことなんだよ。生演奏をテープに録音するのは、デジタル機器のマルチトラッキングがあふれるこの時代では失われた芸術だね。

●『ロスト・イン・ザ・グレア』は前作の『Ancestral Star』に引き続きThrill Jockeyからのリリースになりますが、レーベルについてはどのような印象をお持ちですか? トータスなどのポスト・ロックやエレクトロニカ系のアーティストが中心的な役割を果たした90年代とは異なり、最近のThrill Jockeyはあなた方やウッデン・シップスやリタジーなどが所属し、アンダーグラウンド寄りというか、かなり個性的なラインナップという印象を受けますが?

JON:Thrill Jockeyとの連携は最高だし、彼らの進む方向もこれ以上ないくらいに思っている。

EVAN:Thrill Jockeyは言うことないよ。ファミリーの一員だってことにワクワクする。

●その話と関連して、あなた方はこれまでにも「Not Not Fun」や「Important」「Foxglove」から作品をリリースされていますが、近年はアメリカのアンダーグラウンド・シーンが近年まれに見る活況を迎えているという印象を受けます。とくに「Not Not Fun」はその象徴的なレーベルといえますが、あなたがたもそうした印象をお持ちですか? 実際にそうした機運を感じますか? また、それも一時期のNYやブルックリンを中心とした盛り上がりとは異なり、近年はとくに西海岸のシーンから個性的なアクトが登場しているような印象を受けます。これにはどのような背景があると思いますか?

JON:同感だよ。面白いことはみんなここ西海岸で起こっている。ぼくらの友人のDate Palmsが良い例だ。

EVAN:確かにアメリカのアンダーグラウンドには良いレーベルがたくさんある。とはいえ、ネット上でのレーベルの存在感と、実際にショーを行っている人物や現実に日々起こっていることの間には大きな違いがあるよ。だから圧倒的な人数のおかげでNYがホットでいられるわけで、アンダーグラウンドの中心はやっぱりNYなんだとみなすことは可能だろう。西側じゃ、いろんなことがもう少し断片的だ。ツアーで隣の街まで行くのに東海岸の2倍は運転しなきゃならないくらいだからね。東海岸ではどんな取り組みがあるのかぼくにはこれ以上考えつかないけど、ここのことならわかる。LAからサンフランシスコやポートランドでは、少数だが熱心で音楽を心から愛する人々の集団によって維持されている。そして芸術や学術関連の機関からの資金提供はごくわずかしかないんだ。

●『ロスト・イン・グレア』にはゲストとしてジェイコブ・フェリックス・ハウル、ジ・アルプスやデート・パームスといったサイケデリック/ドローン・アクトの作品参加で知られるマイケル・エルロッドなどが参加していますが、先に話を伺ったガーデン・サウンドやヒグマといったユニットを始め、アメリカのアンダーグラウンド・シーンはミュージシャン同士の交流も活発ですね。互いに刺激を受け合っているような部分もあるのでしょうか?

JON:もちろん。音楽はぼくらの人生の大きな部分を占めているし、みんなといつもいろんなアイデアを出し合っているんだ。

EVAN:その通り、インスピレーションの円ができている感じだ。

●そうした意味で、最近注目しているバンドやアーティスト、あるいは刺激を受けたレコードはなんですか?

JON:ここのところJakob Olaussonの新作「Morning and Sunrise」を車のなかで聴いているよ。エレクトロニック系ではRaimeのサウンドがずっと好き。

EVAN:コンスタントにツアーをしていたこの9か月間、ぼくはダブ・テクノやアンビエント・テクノやもっとリズムにフォーカスした音楽に引きつけられていた。GasやVladislay Delayを相当聴いていたし、Alice Coltraneのデヴォーショナル・アルバムにも夢中になってた。

●あなた方は以前インタヴューで、「すべての創作を貫く哲学・心得とは、“音楽による肉体からの精神の解放”、そして“現実の背後に隠された真実を暴くための道具として音楽を使う”という視点」というような趣旨の発言をされていました。非常に興味深い詩的ですが、バーン・オウルにとって、音楽を作るうえでもっとも大事にしていることとはなんでしょうか?

JON:一定レベルの徹底的なリスニングを音楽が求めると、そのおかげで全体的に研ぎ澄まされた感性が養われるかもしれない。この感性が人に、より深くより包括的なやり方で現実を認識させてくれることもあるとぼくは信じている。それは見出された真実というよりも鮮明な理解と呼ぶにふさわしいものだろう。肉体から“離脱”するための道具として音楽にアプローチする代わりに、音楽を新しい視点を見つけるためのレンズだと思う方がいい。

●最後に、日本のファンに向けてメッセージをください。

JON:ぼくらの音楽を聴いてくれてありがとう。きみらの美しい国へすぐに行けたらと思うよ。己の日本のルーツを再認識するのがぼくの長年の目標なんだ!

EVAN:サポートしてくれてありがとう。いつか日本へ行けたらと思っているし、ぼくらは日本が大好きだ。日本の音楽やアートや食べ物には大好きなものもあるし、自分の目で日本という国を見てみたい。

TEXT by JUNNOSUKE AMAI